ワセリンを忘れた朝、リップクリームを探してみる
マラソンやトライアスロンの当日。荷物を開けて、皮膚保護用のワセリンや擦れ防止バームを忘れたことに気づく。まだ朝早く、ドラッグストアは開いていない。コンビニに寄ってもワセリンが見つからない。そんなときに思い出したいのが、リップクリームです。
ワセリンなどの油性成分を含む、刺激の少ないリップクリームは、脇などの小さな擦れやすい場所を保護する応急の選択肢になります。日用品・化粧品の棚で探してみましょう。ただし、取り扱いは店舗次第で、コンビニに必ずあるとは限りません。
リップクリームは本来、唇のための製品です。ここで紹介するのは成分と摩擦対策の考え方を応用した当日の工夫で、メーカーが腋への使用を推奨している、あるいはレースでの効果が試験で実証された、という話ではありません。
なぜ代わりになるのか
擦れは、皮膚同士や皮膚と衣類が繰り返しこすれることで起こります。米国皮膚科学会は、擦れやすい場所の予防策としてワセリンを塗る方法を紹介しています。[1]
リップクリームの中には、ワセリン、ミネラルオイル、ワックスなどの油性成分を使ったものがあります。例えばロート製薬の公式情報でも、ワセリンを配合したリップ製品が確認できます。[3] こうした油性の膜を皮膚の表面に作り、摩擦を和らげることを期待する、というのがこの応急策の筋道です。
ただし、リップ製品の配合はさまざまです。「リップなら何でもワセリンと同じ」ではありません。マラソン中の腋擦れに対する持続時間、汗や水への耐久性、専用品との同等性は、今回確認した資料からは示せません。
売り場で選ぶなら、刺激の少ないシンプルなもの
まず見るのは、価格より成分と使用上の注意です。無着色・無香料を目安に、メントールやカンフルなどの清涼成分が入っていないかも確認します。「無香料」の表示だけで、すべての刺激成分が入っていないと判断しないようにします。
米国皮膚科学会は、荒れた唇への刺激になり得る成分としてメントール、カンフル、香料などを挙げています。[2] これは唇についての助言であり、腋での比較試験ではありませんが、初めての製品を擦れやすい場所に使う際にも刺激を避ける考え方は参考になります。
色付き、強い香りや清涼感のあるもの、塗ると刺激を感じるものは、この用途には選ばない方が無難です。治療用の医薬品リップを、擦れ予防のために転用するのも避けましょう。手頃な価格でも条件に合えば候補になりますが、合うものがなければ無理に買う必要はありません。
使うなら、擦れる前の健常な皮膚に少量
① 汗や水分を拭く。傷や湿疹のない、擦れそうな小範囲を対象にします。すでに皮がむけた場所、出血している場所、粘膜や陰部には、この応急策を使いません。
② 清潔な指先などに少量取り、薄くのばす。脇なら、実際に腕や衣類がこすれる位置を確認します。スティックを体に直接こすり付けるより、必要な分だけ清潔に取り分けると扱いやすくなります。
③ 違和感を確認する。少量でヒリつき、かゆみ、赤みが出たら拭き取り、使用をやめます。スタート直前の短い確認で、アレルギーなどが起きないと保証できるわけではありません。
④ 衣類の擦れも減らす。縫い目やタグ、脇に当たる生地の位置を調整します。塗っただけで長距離の擦れを完全に防げるわけではなく、走り始めて痛くなったら我慢してこすり続けないことも大切です。
体に直接使ったリップを、そのまま唇用に戻したり他人と共有したりしないようにします。小さなスティックは広い面積には向かず、当日の限られた場所をしのぐ用途と考えるのが現実的です。
トライアスロンは、ウェットスーツとの相性を先に確認
トライアスロンでは、腋や首に塗った成分がウェットスーツに触れることがあります。ワセリンなど石油系成分の使用を避けるよう案内するメーカーもあります。例えばblueseventyは、ウェットスーツの手入れの案内でワセリンなどを使用しないよう明記しています。[4]
リップに置き換えても、成分とスーツの相性の問題は残ります。スーツに触れる部分では、自分の製品の取扱説明に従い、適合が確認できないものは使わないようにします。マラソンやトライアスロンのラン区間での皮膚の擦れ対策と、スイム前のスーツ周りの対策は分けて考えましょう。
次の大会では、小分けした保護剤をレースバッグへ
当日の代用品を知っていると、忘れ物に気づいたときの選択肢が増えます。それでも、普段の長い練習で試した皮膚保護剤を持っていくのが一番確実です。小さな容器に適切に小分けするか、携帯サイズをレースバッグの定位置に入れておきましょう。
ワセリンが買えない朝は、リップの棚も見る。ただし、選ぶのは刺激の少ない油性タイプ。脇などの健常な皮膚に少量、ウェットスーツとの相性は別に確認。この条件とセットで覚えておくと、役に立つ工夫です。
参考資料
確認:2026年10月25日。皮膚科学会とメーカーの一次情報を参照しています。リップクリームによるレース中の擦れ予防を直接検証した臨床試験としては扱っていません。店頭在庫や特定商品の購入・使用を保証する記事ではありません。